読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

テクノとかエレクトロとか

クラブミュージック全般について書きたいです。

The Man-Machine / Kraftwerk(78)

Kraftwerk アルバムレビュー

 

ザ・ロボッツ

ザ・ロボッツ

 

1.The Robots<ロボット>

2.Space lab<スペースラボ>

3.Metropolis(メトロポリス

4.The Model<モデル>

5.Neon Lights<ネオン・ライツ>

6.The Man Machine<マン・マシーン>

 

邦題「人間解体」

1978年5月発売 [独12位/英9位/米130位]

 

軽みに至る

 

ジャケットの強烈なインパクトが象徴するように彼らにとって最も有名なアルバムで、エレクトロポップの一つのスタンダードを築き上げた金字塔的な1枚です。他のアーティストに与えた影響も大きく、その後のイギリスではニュー・ロマンティックと呼ばれるシンセポップバンドが多く登場し、日本ではテクノポップというワードを生むきっかけとなりました。ロックの歴史の中でもよく取り上げられるのを見かけます。

 

曲のタイトルからロボットや宇宙などのSF的なテーマが見えてきますが、本作の大きな特徴は人間(Man)と機械(Machine)との理想的なコミュニケーション、正にクラフトワークのこれまでの活動そのものがコンセプトになっている所にあります。ダンサンブルなマシンビートとサウンドメイキングは更に洗練され、電子サウンドならではの感覚的な快楽を与えてくれます。そしてこれまでにあった機械の「無機質」や「冷たい」イメージとは対照的に非常に「感情的」な印象すら感じさせます。アメリカのDJアフリカ・バンバータが彼らをファンキーだと評したり、このアルバムのミキシングエンジニアの1人であったリーナード・ジャクソンが「彼らに出会うまでは黒人4人組のミュージシャンだと思ってた。」と言わせたのは、彼らの機械を通してのソウルフルな表現とビート、リズムの誠実な扱い方から感じたからなのではないかと思っています。

 

「Autobahn」や「Trance Europe Express」などこれまでのアルバム中でのメインとなる楽曲などは存在せず、 6曲全て同様の質感で出来ている所も本作だけの特徴です。敢えて言うならクラフトワークというバンドを象徴するM1「The Robots」、切な美しくもキャッチーなメロディーが印象的なM4「The Model」、シンセサウンドの重なりが気持ち良いM5「Neon Lights」などが聴きどころでしょうか。

 

パンクロック・ムーブメント終焉で新しいものを求めていたリスナーと、遂に決定的な研究成果を発表するタイミングだったクラフトワークの2つのバイオリズムが見事に合致し、正に売れるべくして売れた歴史的名盤。クラフトワークを初めて聴く方でもエレクトロポップサウンドの面白さを十分に感じられるのではないでしょうか。

 

ザ・モデル

ザ・モデル

 

Trans-Europe Expless / Kraftwerk(77)

Kraftwerk アルバムレビュー

 

Trans-Europe Express

Trans-Europe Express

 1.Europe Endless<ヨーロッパ・エンドレス>

2.Hall of Mirrors<鏡のホール>

3.Showroom Dummies<ショウルーム・ダミー>

4.Trans-Europe Expless<ヨーロッパ特急>

5.Metal On Metal<メタル・オンメタル>

6.Abzug<アップツァック>

7.Franz Schubertフランツ・シューベルト

8.Endless Endless<エンドレス・エンドレス>

 

邦題「ヨーロッパ特急」

1977年3月発売 [独32位/英49位/米119位]

 

カッコ良いジャケットだ

 

メッセージ性の強かった前作「Radio-activity」は「Autobahn」の様なヒットにはならず、その反動からか「ヨーロッパ横断鉄道」をテーマにしたアルバムを発表しました。前作と比べて大きなチャートの変化は見られないものの、時代を先取りしていたこのアルバムの内容は後にぐっと再評価されることになりました。

 

謡曲風のノスタルジックなシンセのメロディーが印象的なM3「Showroom Dummies」は80年代のニュー・ロマンティックのアーティスト達に大きな影響を与え、82年にはこの曲がイギリスでリバイバルヒットしました。

 

このアルバムのハイライトであるM4「Trans-Europe Expless」は列車の走行音をダンサンブルなビートに当てはめ、そのままの勢いでなだれ込むM5「Metal On Metal」は1度列車のビートのみになり、そこからミニマルミュージックの様に新たなパーカッションパートが段々と積み重ねっていき、独特な盛り上がりを聴かせてくれます。このダンサンブルなドラムフレーズのみが強調される所は、同じ頃にアメリカのブロンクスで発祥したブレイクビーツミュージックを彷彿とさせます。ブロンクス生まれでヒップホップの始祖と言われているアフリカ・バンバータクラフトワークの音楽にファンクを見出し、彼の82年のシングル「Planet Rock」で「Trans-Europe Expless」のストリングシンセのメロディーとその後の「Numbers」のリズムトラックを大胆にサンプリングした事でも有名です。

 

M1「Europe Endless」はこれまでの彼らの曲の中で最もポップでキャッチーです。ベースサウンドとマシンビートが更に強固になったこともあってか、クラフトワークで初めて体を揺らせる楽曲と言えるのではないでしょうか。続くM2「Hall of Mirrors」はチェンバロ風シンセ、空間の作り方、すべてが美しいとても上品な楽曲です。

 

ヴォーカルの比重も大きくなり、どの曲もポップで聴きやすさを十分に持っていながら徹底して少ない音数でミニマルに仕上げる曲作りによって、飽きを全く感じさせません。今ではクラフトワークの最高傑作と称する声も少なくありません。それにしても毎回違ったアプローチで挑みつつ、アルバムとして常に最高傑作を更新し続けている所に驚かされます。

Radio-activity / Kraftwerk(75)

Kraftwerk アルバムレビュー

 

Radioactivity (2009 Remaster)

Radioactivity (2009 Remaster)

 1. Geiger Counter<ガイガー・カウンター(放射能測定器)> 

2. Radioactivity<放射能

3. Radioland<ラジオランド> 

4. Airwaves<エアウェーヴス>

5. Intermission<中断> 

6. News<ニュース>

7. The Voice of Energy<エネルギーの声>

8. Antenna<アンテナ>

9. Radio Stars<ラジオ・スターズ>

10. Uranium<ウラニウム>

11. Transistor<トランジスター>

12. Ohm, sweet Ohm<オーム・スイート・オーム>

 

邦題「放射能

75年10月発売 [独22位/米140位]

 

音楽表現に真面目すぎ

 

前作「Autobahn」の商業的成功で彼らはスタジオと機材を刷新し、自分たちのスタジオのみですべての録音ができるようになりました。前作のツアーに参加していたヴォルフガング・フリューアとカール・バルトスもメンバーに加わり、1枚目のアルバムからレコーディングエンジニアとして参加していたコニー・プランクとは離れることになります。バンドを取り巻く環境が大きく変わったにも関わらず、彼らの目指す方向は全くブレないどころか更に実験的でメッセージ性の強い作品を発表しました。

 

「ラジオ放送」と「放射能」の2つのテーマを持ち、全12曲で1曲の収録時間も1分弱~6分強とかなりバラつきがありますが、アルバムのA面(M1「Geiger Counter」~M6「News」)は曲間が全てシームレスで全体が繋がっている構成になっており、その後のB面に関しても繋がってはいないもののそれぞれ曲の終わりの無音を極力無くしているようで、まるでアルバムが1曲で出来ているような聴き心地です。

 

インダストリアルな楽曲が多くを占めている所は初期の作風を感じさせますが、ポップミュージックとしての楽曲の完成度は初期とは比べものにならない程に洗練されていて(特にタイトル曲からの3曲と「Antenna」)取っ付き難さはありません。ノイジーなシンセサウンドも音として非常に面白いです。M5「Intermission」で聴ける時報もアルバムの中でとても絶妙なタイミングで流れます。M7「The Voice of Energy」での「私はあなたのしもべであるが、同時に主でもある。それゆえ私をしっかりと守りなさい。」という少ない言葉で非常に重要な歌詞も今作に限っては聞き逃せないですね。

 

「音楽を世界共通の言葉として機能させたい」というラルフの言葉通りの力強いアルバムです。エレクトロミュージックとかポップミュージックとかの括りで語る事自体が間違えているんじゃないかと思うくらいに、表現としての音楽の可能性を強く感じさせてくれる作品です。