テクノとかエレクトロとか

クラブミュージック全般について書きたいです。

Salsoul Recordsについて

 

サルソウル・レコード(Salsoul Records)は74年にジョセフ、スタンレー、ケネスのケイヤ3兄弟によって設立されたニューヨークのダンス・ミュージックレーベルです。それまでPIRフィラデルフィア・インターナショナル・レコード)を拠点に活動していたスタジオミュージシャン達(ソウルトレインのテーマ曲で知られる「MFSB」のメンバーを中心に)を引き連れ、「The Salsoul Orchestra」という名のレーベル専属のバンドを作りました。彼らの豪華なオーケストラサウンドと躍動的なラテンリズムの融合はサルソウルならではの新たなダンス・ミュージックを誕生させました。更にサルソウル・レコードは数々のDJをリミキサーに起用し、世界初市販用の12inchシングルや多くのフロア向けリミックスを積極的に制作していきました。フィリー・ソウル→ディスコ→その後のクラブミュージックのブリッジ的な役割を担った重要なレーベルとして今でも多くのダンス・ミュージックファンに愛され続けています。そんなサルソウル・レコードから生まれた名曲をほんの一部ですが紹介します。

 

Ten percent / Double Exposure(76)

Ten Percent

Ten Percent

  • Double Exposure
  • ダン
  • ¥250

 ダブル・エクスポージャーは64年にフィルデルフィアで結成されたR&Bヴォーカルグループです。フィリーサウンドとダンサンブルなリズムが見事に融合された正にサルソウルならではの高揚感溢れる楽曲になっています。この曲は世界初の販売用12inchシングルとしても発売されました。元々12inchシングルはレコード会社がディスコでDJがプレイする為の宣伝用としてプレスされたものでしたが、DJウォルター・ギボンズが手掛けた10分近く(原曲は3分程)のリミックスが予想以上に観客に受け、一般発売に至りました。この12inchシングルは10万枚近く売り上げ、新たなレコードの市場を作り上げた歴史的作品となりました。

 

Runaway / The Salsoul Orchestra Feat.Loleatta Holloway(77)

Run Away

Run Away

サルソウル・オーケストラは単体でも多くのディスコトラックを発表していますが、この曲はサルソウルを代表するディーヴァであるロリータ・ハロウェイがヴォーカルとして参加しています。小気味良いギターカッティングから流れるように盛り上げていくフィリーサウンド、そして堂々たるロリータの歌唱力が存分に発揮されたサルソウル・レコードを代表するダンス・クラシックスとなりました。97年、Nuyorican Soulによってカバーされリバイバルヒットもされています。

 

Let No Man Put Asunder / First Choice(77)

Let No Man Put Asunder

Let No Man Put Asunder

  • FIRST CHOICE
  • R&B/ソウル
  • ¥150

ファースト・チョイスはPhilly Groove Recordsからデビューした女性ヴォーカルグループです。サルソウルでは「Dr.Love」、「Love Thang」、「Double Cross」などダンス・クラシックスを多く残しています。この曲は当初はシングルにはならなかったもののディスコ/ガラージの定番となり、多くのDJにプレイされました。79年にはウォルター・ギボンズ、83年にはシカゴのDJフランキー・ナックルズとシェップ・ペティボーンのリミックスが発売され、99年にはメアリー・J・ブライジがカバーするなど、長く愛され続けています。


Spring Rain / Silvetti(77)

Spring Rain

Spring Rain

  • Silvetti
  • R&B/ソウル
  • ¥150

アルゼンチン出身のピアニスト/作曲家のベブ・シルヴェッティがスペインのイスパヴォックスから発表した音源をサルソウルが契約しNYに輸入され、全米チャートで34位を記録しました。イントロの印象的なピアノバッキング、転調後の少し官能的なスキャット、そしてなんと言ってもメインの美しすぎるストリングスの旋律はサルソウルが目をつけ、すぐさまフロア向けのリミックスを制作したのも頷ける永遠の名曲です。


I Got My Mind Made Up / Instant Funk(79)

I Got My Mind Made Up

I Got My Mind Made Up

  • Instant Funk
  • ダン
  • ¥250

インスタント・ファンクはMFSBと同じくPIRフィラデルフィア・インターナショナル・レコード)のセッションバンドでしたが、バニー・シグラー(フィリー・ソウルを代表するアーティスト/プロデューサー)のプロデュースの元、サルソウルでも作品を発表しました。「今夜のあいつはセクシーチャンス」という少し残念な邦題のついたこの曲はビルボードR&Bチャート、ダンスチャート共に1位を記録した大ヒットとなりました。12inch版のリミックスはパラダイス・ガラージのレジデントDJであるラリー・レヴァンが手掛けています。

 

Love Sensation / Loleatta Holloway(79)

Love Sensation

Love Sensation

  • LOLEATTA HOLLOWAY
  • ダン
  • ¥200

先程の「Runaway」でも登場したロリータ・ハロウェイですが、「Relight My Fire」で知られるダン・ハートマンのプロデュースにより、ドラマチックなダンス・チューンとなっています。ロリータのヴォーカルも熱唱を飛び越えてもはや鬼気迫るものを感じます。ミックス担当はトム・モールトンで、ヴォーカルにコーラスに生のオーケストラなど音数が多い楽曲を非常にすっきりと聴かせるミックステクニックは流石です。

 

Call me / skyy(81)

Call Me

Call Me

スカイは男性5人のバンド隊と女性ヴォーカル3人という変わった編成で、79年のデビューから5年の間に7枚のアルバムを発表した後期サルソウルを代表するグループです。Brass Constructionの中心メンバーだったランディ・ミューラーがプロデュースということで、ファンクとディスコを混ぜ合わせ、エレクトロニックサウンドもふんだんに取り入れたダンスミュージックを量産しました。R&Bチャート1位を記録しバンド最大のヒットとなったこの曲は、彼ららしいエレクトリックファンクに都会的なムードも漂わせる非常に上品な楽曲です。

 

Ain't No Mountain High Enough / inner life(81)

Ain't No Mountain High Enough

Ain't No Mountain High Enough

  • Inner Life
  • R&B/ソウル
  • ¥150

インナー・ライフはディスコの名プロデューサーであるパトリック・アダムスとグレッグ・カーマイケルによるディスコ・プロジェクトです。リード・ヴォーカルに抜擢されたのはジョセリン・ブラウンで、サルソウルを離れてからもソロアーティストとして活躍することになります。67年、モータウン出身のashford & simpsonによる不朽の名曲のカバーですが、歌詞の力強さに負けないジョセリンの迫力のヴォーカル、高揚感溢れる豪華なアレンジ、更にミックス担当はラリー・レヴァンという完璧なダンス・クラシックスです。

Electric Cafe / Kraftwerk(86)

 

Musique Non Stop

Musique Non Stop

1.Boing Boom Tschak<ボーイング・ブーム・チャック>

2.Techno Pop<テクノ・ポップ>

3.Musique Non-Stop<ミュージック・ノン・ストップ>

4.The Telephone Call<テレフォン・コール>

5.Sex Object<セックス・オブジェクト>

6.Electric Cafe<エレクトリック・カフェ>

 

邦題「エレクトリック・カフェ」

1986年11月発売 [独23位/英58位/米158位]

 

テレフォン・コールは2曲に分けないで

 

1983年7月「Tour De France」というEPを発売しました。「Computer World」の大規模ツアーによる疲労からか、ラルフ・ヒュッターは体力作りに関心を抱き、エーミール・シュルトの勧めによりサイクリングを始めることになります。やがて彼は日課にするほど夢中になっていき、サイクリングもしくはスポーツをコンセプトにしたアルバムを作ろうと提案しますが、メンバーからは反対されてこのシングルトラックのみの発売となりました。

 

そして同年に「Techno Pop」というタイトルのアルバムを発売する予定がこれまた頓挫することに。これまで時代の1歩以上先をアルバムで表現していた彼らがアメリカのエレクトロダンスミュージックシーンの急速な発展により、何を最新のサウンドとして発表するかを決めかねており、更にデジタル録音の登場によりスタジオの刷新と新たな録音過程の再考に時間を費やした為、アルバムの発売を遅らせることとなりました。こうして前作「Computer World」から5年後、アルバムタイトルは「Electric Cafe」に変わりようやく発売されることになったのです。

 

声のサンプリングとヒップホップビートで始まるM1「Boing Boom Tschak」からの3曲は切れ目なく繋がっており、次の曲のタイトルを歌詞として使用していて、まるで1曲で出来ているような構成になっています。ビート主体だった3曲から一転してM4「The Telephon Call」ではクラフトワークお得意のメロディアスな歌モノ(カール・バルトスがリードヴォーカル)、続くM5「Sex Object」では彼らにとっては珍しくシンセでシュミレートされたギターとスラップベースの音が入ったファンキーなトラックと、アルバムの流れ自体がDJミックスを聴いているかのような感覚にさせてくれます。これまでには必然としてあったアルバム内コンセプトは今作には存在しないので聴き終わった後に残る印象は薄いですがその分、手軽に肩の力を抜いて楽しめる作品になっていると思います。

 

アメリカのクラブミュージックシーンに影響を受けて作られたという事でクラフトワークのオリジナルアルバムの中でも間違いなく異色の作品と言えるでしょう。しかしこれまで電子音楽の可能性を広げてきた彼らのディスコグラフィーの中でも、この「Electric Cafe」でのクラブミュージック、またはダンスミュージック志向な作品は必要不可欠だったんだと思います。

 

ちなみに2009年のリマスター盤ではアルバムタイトルが「Techno Pop」に変更になりました。更にM4「The Telephone Call」はラルフ・ヒュッターがリードヴォーカルのシングル盤に変わり、同シングルに収められていた「House Phone」というトラックが追加されています。

The Telephone Call

The Telephone Call

 

Computer World / Kraftwerk(81)

 

Computer World

Computer World

 1.Computer World<コンピューター・ワールド>

2.Pocket Calculator<電卓>

3.Numbers<ナンバース>

4.Computer World 2<コンピューター・ワールド2>

5.Computer Love<コンピューター・ラブ>

6.Home Computer<ホーム・コンピューター>

7.It's More Fun to Compute<コンピューターはボクのオモチャ>

 

邦題「コンピューター・ワールド」

81年5月発売 [独7位/英15位/米72位] 

 

今もなお現代的

 

3年ぶり8枚目の作品で、来たるべきコンピューターテクノロジーの発展と社会への浸透化がコンセプトになっています。アルバムを発表する毎に強化されていったドラムビートメイキングはこのアルバムで極致に達しました。更に前作よりも各音のリバーブが抑えられているからか、全体的にダイレクトかつシャープな聴き味です。シンセポップ全盛の時代に発売され、当時は「シンプルすぎる」という批判もあった作品ですが、この計算されたリズムトラックと多彩なシンセサウンドを無駄なくシンプルに聴かせられる所にクラフトワークの偉大さを感じます。

 

M1「Computer World」のズンズン迫るようなベースシーケンスで幕開け。「仕事、数字、金、国民」と静かに警告している様な歌詞は5枚目の「Radio-activity」の手法を思い出させます。そこから続くM2「Pocket Calculator」へのドラムビートの変化が独特のドライブ感を生んでいて更に引き込まれます。そして強烈なリズムトラックに乗せて様々な国の言語で数字をカウントしていくM3「Numbers」から間髪入れずになだれ込むM4「Computer wolrd 2」で一曲目の主題が繰り返される(我に返らせる?)とても見事な構成になっています。その後も切なくも少し可愛らしいシンセのメロディーが印象的なM5「Computer Love」、イントロから凄まじく格好良いM6「Home Computer」と気づけば全曲素晴らしいです。

 

クラフトワークならではのコンセプトで、今聴いても古臭さを感じないどころか、現在だからこそこのサウンドとメッセージはしっかりと刺さる内容になっています。間違いなく必聴の名盤でしょう。とは言っても「Autobahn」以降の彼らの作品はすべて必聴なんだと思いますが・・・。

 

Numbers

Numbers